ヤスリは、実はとても技術的に奥深い製品です。複雑で細かな技術の工程があり、丁寧に誠実に製造しないと、直ぐに性能に現れます。
最も怖いのは脱炭です。これは、ヤスリから炭素が抜け、本来の硬度が無い部分を言い、削れずにスルっと滑ってしまいます。あるホームセンターで、海外から輸入された商品を試しに買ってみたら、なんと脱炭があって、チュルチュルに滑っていました。ゴリゴリ音がするだけで、一向に削れません。しかし、それらは外見では殆ど判りませんから、検査がしっかりしていないと、それらが店頭に並ぶ事になります。プロは2度とそこから買わないのではないでしょうか。
通常ヤスリには2つの歯(上目、下目)があり、これらの仕様はJISで決まっています。しかし、あの恐ろしい脱炭のみならず、目(歯)の深さや角度、またその歯先の反りの状態などにより、大きく切れ味が変わってきます。もちろん鋼材の成分により硬度が変化しますが、一般的には炭素工具鋼が使用されています。切れ味を測るには、ヤスリの歯の平面に親指を軽く当て、目の流れに逆らって撫でてみてください。1本だけでは判り難いですが、複数のヤスリで行うと切れ味の差が直ぐ皮膚感覚で判ります。軽く爪を立てて目に逆らって滑らせてみても同様に判ります。切れるヤスリの目は、まるで刃物のように手が切れるほど鋭くなっているものもあります。
大工さんは、天井に貼られたプラスターボードをヤスリで削って、形を調整します。そのヤスリはボードヤスリと呼ばれますが、コーナーや端の調整が多い為に、短い物が好まれます。軽天工事には、並行度を出す為に350mm以上の長いものが必要ですが、天井での作業となるため肩が凝るようです。通常のボードヤスリは、表が鬼目、裏が鉄工目ですが、両面とも鬼目の物もあります。また最近では、材質は重たい炭素鋼ではなく、軽金属を使用した物もあり重宝されているようです。
今やチェンソーは特殊ではなく一般電動工具製品の中にもあり、一般家庭でも見受けられる工具です。木材は湿気を含むほど抵抗があって切り難く、また釘もそのまま残っている古材を切る事が住宅工事では多いので、目立て修正の手入れは必須なのですが、意外に一般の方はその手入れが出来ていません。その理由は、研ぎ難い事が挙げられます。チェンソーの歯を研ぐコツは、その押し付ける角度にあります。
押えて使用すると直ぐ曲がるチャンソーヤスリは、素材や、その焼入れ処理に問題があります。また最初から曲がりがある物も見受けられますが、転がしてみれば、軽度の曲がりでも直ぐ判ります。良い製品の切れ味は、吸い付くような、ねっとり擦れるような感触があり、ゴリゴリとする感触はありません。
チェンソーの砥ぎ方は、刃の研ぎを行う作業と、刃の形状を調整する作業、この2種類があります。刃を研ぐ作業は、チェンソーヤスリを使用しますが、この作業を数多く繰り返すと刃自体が消耗し、刃の接触部分の形状を調整する必要が出てきます。この調整は小さな平ヤスリで行いますが、通常そこまで使われず、チェンソーのチェンその物を交換されるている様です。
【1】ヤスリのサイズを選択する
チェンソーメーカーにおいて、機種別に案内されているヤスリサイズを使用してください。
そのサイズより、大きくても小さくてもいけません。
チェンソーの刃は、丸みを帯びており、その丸みにあった径のヤスリを使用しないと、ただ刃を削って駄目にしてしまいます。
ソーチェンのタイプ | ピッチ (インチ) |
ヤスリサイズ (mm/インチ) |
カッター形状 |
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ハスクバーナ | オレゴン | ||||
H30"Pixel" | 95VP | .325" | 4.8/3/16 | Semi chisel | |
H25 | 21BP | .325" | 4.8/3/16 | Semi chisel | |
H42 | 73LP | 3/8" | 5.5/7/32 | Chisel | |
S36 | 91VG | 3/8" | 4.0/5/32 | Chamfer chisel | |
S36X | 91VS | 3/8" | 4.0/5/32 | Chamfer chisel | |
H64 | 27 | .404" | 5.5/7/32 | Micro chisel |
【2】ヤスリを使用する方向と場所を確認する
チェインを見ると、刃の向きが互い違いについていることがわかります。
ヤスリは一方方向に擦るのであって、往復で擦ってはいけません。刃を駄目にしてしまいます。
【3】ヤスリの押し付け方、角度、力配分
ヤスリの約1/5程度が刃の上に出る位の深さが適正。
ヤスリの刃を軽く当て、決して底に強く押し当てない。
横に70%下に30%の力配分。
ヤスリは押して使い、引くときは力を抜き、刃に当てない。
【4】消耗して短く不揃いになった刃を回復させる露出調整作業
精密平ヤスリで、各部位の高さ、サイズ、形状を修正します。
色んなダイヤモンドのカッターがありますが、工事などで良く使われるものは、金属パウダー(メタルボンド)とダイヤモンドを焼結して、そのセグメント(刃)を作ります。主に小型(4-8インチ)の製品をカッターと言い、それ以上の製品をブレードと一般的に呼んでいます。また、その形状からカップホイルと呼ばれる物もあります。非切削材の性質に合わせて、厚みやダイヤモンドのグレード、その量、メタルボンドの配合を調整し、最も適した製品を作ります。実は、そのメタルボンドが重要な役目を果たしており、その配合により性格が大きく変化します。ご存知でしょうか?一般的に、切削力とその寿命は相対関係にあります。メタルボンドが柔らかいと、良く切れますが磨耗がとても早くなります。
まず機械が乾式か湿式かを確かめましょう。乾式カッターを誤って湿式の工具に装着すると、磨耗が異常に早くなります。よくあるのが、非削材をカッターの側面で削る使い方です。この使い方は片側が異常に磨耗して、セグメントが飛んだり、基板がチギレたりしてとても危険です。本来カッターは、TOP面のダイヤが切断の仕事を行うのであり、側面が行うのではありません。派手に側面のデザインに凝った商品も輸入製品には多く見受けられますが、性能にはまったく影響ありません。
土壁やモルタル、漆喰の壁に施工したい、そんな用途にはカップ型のカッターが向いています。一般の板状のカッターと違い、その名前のとおりカップ型に成形されていますので、エッジを使って非削材を削り落とす事に良く使われます。但し一般的には、ペンキなど粘性の高い非削材には向きません。壁のひび割れ補修には、クラック補修の軸型インターを使用します。また、目地を切る場合には、U字型や□型のカッターが最適です。V字型カッターは、ヒビ割れ面を整える場合に使えます。色んな用途にむけた種類がありますので、目的にあったカッターを探す事が大切です。
カッターを使用中に、途中で切れ味が悪くなったご経験はありませんか?原因は色々あります。切削の途中で非削材の質が変化したり、切削指定対象以外の物を切っていると、カッターの表面が焼けてきて、イワユル「滑る」状態が起こります。そのまま使用し続けると、高温になって曲がりや破損が起きて大変危険ですので、そのまま使用しないでください。切れが悪くなったと感じたら、一旦その非削材から離し、レンガなど柔らかい材質の物を軽く数回切ると、焼けた表面のボンドが落ち、下層にあるダイヤの頭だしが行われ、切れ味が戻ります。また、切削工具に、指定サイズ以外のカッターを装着すると、馬力不足が起きたり、限度以上の回転数になったり、やはりこれも危険ですのでお辞めください。所有する工具にあったサイズ、目的物に合うカッターを使用する事が大切です。
薄く硬いタイルは、切削の途中でタイルの割れが発生したり、またその切削面が細かく欠けてしまう事があります。薄く硬いタイルを切るには、高品質のダイヤを最善の割合で配合し、メタルボンドもそれら薄く硬い物が切れる最適配合が必要です。カッター自体の厚みを1mmの極限まで薄くした物も等もあり、磁器タイルや硬質タイルなど、色んなニーズに沿った種類が発売されています。
ダイヤモンドカッターの良し悪しは、何できまる? | |
メタルボンド(コバルト、ニッケル、タングステン等金属粉)の配合率とダイヤモンドの品質で決まります。 | |
セグメントの形状による違いは、なんの為? | |
セグメントタイプが一般的ですが、オールラウンド(切れ目が無い)タイプは、切断面が綺麗で割れが少なく、薄く、硬い被削材にむいています。 | |
カップ形の種類は、なぜあるの? | |
カップ型はエッジを利用しますが、Y字型は腹全体を使い平面の研摩に使います。 | |
切ってはいけない被削材は? | |
プラスチック、エンビ、厚鋼鈑、ステンレス、ゴムやタイヤ。ガラスは専用の歯が必要です。 | |
どこまで深く切れるのでしょう? | |
デイスクグランダ =(4インチ=25mm 5インチ=35mm) 丸ノコ =(6インチ=50mm 7インチ=60mm 8インチ=75mm) |
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ブレードの取付方向は? | |
テール |
回転方向のマークが無いものは、セグメントに見えるダイヤの後ろにあるテール(シッポ)を見てください。テールの逆方向が回転方向となります。 |
寿命を縮めてしまう! | |
指定被削材以外の柔らかい物を連続して切ると、歯の消耗は著しく早くなります(例:ブロック、モルタル)。柔らかい材料には、それなりの配合をした専用カッターがあります。 | |
硬く切り難いものは、専用のカッターで! | |
磁器タイル、硬質ブロック、コンクリートパイル、鉄筋入コンクリート、御影石等、硬い材料には、それなりの配合をした専用カッターがあります。 | |
やってはいけない、危険な事とは? | |
カッターの側面を使う、曲線を切る、衝撃を与える、カッター円板が曲がるような切り方をする。いずれも基板を破損する可能性が大であり、非常に危険です。またカバーを外して指定外の大きなサイズを付けると、異常負荷となりモーターが焼けます。 | |
必要な事前チェックとは? | |
工具の回転スイッチを入れた途端に左右に振れたり、切断開始後から異常な振動がある場合は、即座に中止して取り付けを再確認してください。 |
超硬、焼入硬、セラミック、ステンレスなどが、楽に研げます。 | |
カミソリを研ぐ感じで、軽く研ぐだけで十分です。 | |
10倍の速さで、正確に研げます | |
矢印の方向に使用すれば、仕上がりが早く、1/2の力で済み、研ぎ幅も広く長持ちがします。 | |
常に水平が保てます。(凹面ができません) 平面の修正の必要がありません。 精度が高く仕上がります。 |
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水を十分にかけて使います。使用後は、錆びの原因にならないように、良く拭き取り、油を塗っておいてください。 |